1. 気づき①:「自分の強み」の言語化って難しい
採用担当として何百枚もの職務経歴書を読んできた私は「良い自己PRの書き方」は理論的に理解しているつもりでした。「定量的な成果を述べること」「その背景にある工夫を説明すること」「なぜそれが強みなのかを明確にすること」——すべて頭で理解していました。
ところが、いざ自分の自己PRを書いてみると、ペンが全く動きません。「採用担当として〇〇年間、毎年〇〇名の採用を担当しました」という事実は記述できます。しかし「この経験から私は〇〇という強みを身につけた」という形に変換するプロセスが、他人のことなら簡単でも、自分のこととなると信じられないほど難しいのです。
「当たり前にやってきたこと」を「特筆すべき強み」として言語化する——この距離感が、自分に対してだけ異常に遠く感じられるのは、心理的なフィルターが自分に対してかかっているからなのだと、身をもって理解しました。
これまで候補者の皆さんが「自己PRが書けない」「自分の強みがわからない」と悩む気持ちに対して「なぜ書けないのか」と感じていた部分があります。申し訳ありません。今は心から「自己PRの言語化がこんなに大変だったのか」と気づいています。
💼 採用担当として正直に書きます
人事3年の知識があっても、自己PRはひとりで書けない——これは恥ずかしい本音です。自己PRは「対話」で磨かれるもので、ひとりで完成させるものじゃない。エージェントとの初回面談・キャリアアドバイザーとの壁打ち・職務経歴書の添削、これらを通じて自分の強みが言語化されていきます。「自分の強みがわからない」から動けないのは逆。動いたから、強みが見えてくるのが転職活動の本質です。
😅 2. 気づき② 「転職理由のポジティブ変換」の心理的ハードル
採用担当として面接をしていたとき「転職理由をポジティブに語れない候補者」に対して、心のどこかで「もう少し上手に前向きに言えばいいのに」という感覚を持つことがありました。
ところが自分が転職を考え始めると、転職したい本音の理由は、かなりネガティブです。「今の会社では、子どもの急な発熱で休みにくい雰囲気がある」「週5フルタイム出社で、子育てとの両立が現実的に想像できない」「在宅勤務を申請したいが、企業文化として『テレワークはサボり』という暗黙の了解がある」——これらが正直な転職理由です。
これを面接でそのまま言えるはずがありません。採用担当として面接を受けている企業側に「あなたの会社では子どもが急に発熱したときに休みにくい雰囲気があるから嫌です」なんて言ったら、採用は一瞬で終わります。
だからこそ「育児との両立ができる環境を求めて」「より柔軟な働き方を実現したい」というようにポジティブに変換する必要があるのですが、この変換を「自分のこと」として行う心理的負荷が、採用側にいるときの想像をはるかに超えています。
自分のネガティブな感情を認めながらも、それをポジティブな言語に翻訳する——その過程で「自分の本心に向き合う」という心理プロセスが必要になるため、採用担当として「変換能力」を見ていただけでは見えない、当事者の心理的疲労があるのだと気づきました。
😅 気づき③ 「エージェント初回面談」における期待と現実のギャップ
採用担当として何度も転職エージェントとの面談を「受ける側」として見てきました。業界外の面談相手が初対面のエージェント担当者と話している様子を何十回と見ています。
だからこそ「エージェント登録後は、すぐに求人が送られてくるだろう」という気軽な気持ちで登録してしまったのですが、実際にエージェント担当者との初回面談を受けてみると、面談は全く異なる形で進みました。
最初に聞かれるのは「現在の職務内容について」「これまでのキャリアについて」という基本情報ではなく「なぜ転職したいのか」「次の会社に求めるものは何か」「育児との両立をどのような形で考えているか」という、かなり深掘りした自己分析に近い質問です。
その場で「いい質問ですね。ちょっと整理してから改めて……」と言いたくなるレベルで、自分の希望が言語化されていないことに気づかされました。エージェント側としても「情報が曖昧だと、ミスマッチな求人を紹介してしまう」という責任があるため、しっかり自己分析を促す質問をするわけです。
「エージェントに登録すれば、向こうが求人を提案してくれるだろう」という受動的な期待は見事に砕かれました。「自分の希望を言語化してからエージェント面談に臨む」という準備が、実は非常に重要だったのです。これまで候補者側の様子を見ていただけでは見えなかったプロセスがあることに気づきました。
😮 3. 気づき④ 「市場価値を知る」ことの心理的インパクト
採用担当として「各職種の給与相場」「同業他社の待遇レンジ」については、日々の採用活動の中で把握していました。しかし「自分が市場からどう評価されるのか」を確認するプロセスは、想像以上に心理的な緊張を伴うものでした。
エージェント登録後、市場価値の提示を受けた結果は——「思ったより高く評価されているケース」もあり、「思ったほどではないケース」もありました。採用担当としての経験は、確かに市場では一定の価値を持っています。しかし「採用担当の経験が重宝される」という評価は、業界や企業規模に大きく依存することが判明しました。
「人事評価の専門知識がある」というだけでは、年収1000万円超の選択肢は得られません。同時に「採用担当経験だけでは、エンジニアやコンサルタントほどの市場価値はないのか」という現実も突きつけられました。
ただし、この「市場価値の確認」プロセスは、転職するかどうかに関わらず有益でした。「これくらいの条件なら転職できるのか」というリアルな基準が持てることで、現職の待遇を客観的に評価できるようになったからです。「年収いくらで転職は正当化されるのか」という判断基準が、初めて手に入りました。
⚠️ 4. 気づき⑤ 「育休中・ワーママという属性」が市場でどう見られるか
採用側として「育休中の転職」「ワーママの採用」について判断してきた私ですが、当事者側になって初めて「その視線の強度」を感じました。
採用企業側の懸念は「育休中に転職活動をしている=現職に不満がある可能性が高い」「ワーママ=今後も突然の休みが生じる可能性」「育児と仕事の両立=生産性が落ちるのでは」というものです。これらの懸念に対して、採用側にいたときは「そういう懸念もあるよね」と客観的に見ていました。
しかし当事者側になると「その懸念を払拭するために、どのように説明すればいいのか」という心理的な負荷が、想像以上に大きいことに気づかされました。「育休中だからこそ、真摯に次のキャリアを考えている」「ワーママだからこそ、効率的な時間管理ができる」というポジティブなナラティブを、いかに采配を通じて示すかという課題です。
💡 5. 採用担当経験が「活かせた」場面
すべてがギャップとは言いません。採用担当経験があるからこそ、転職活動で活かせた場面もあります。
強み① 面接の「意図読み」ができる
採用側として面接質問の設計をしてきたため「この質問の背景にある採用担当の懸念は何か」をある程度推測できます。例えば「お子さんが急に発熱した場合、どのように対応しますか」という質問の背景には「予期しない欠勤がどの程度生じるか」という懸念があることを知っています。
その意図を読むことで「懸念を直接的に払拭する回答」をすることができます。例えば「月に1~2回程度の発熱を想定して、パートナーとの役割分担体制を整えている」というように、採用側が知りたい「欠勤の頻度と対応体制」を明確に述べることができるわけです。
強み② 「採用計画のタイミング」を理解している
採用側として「何月から何月が採用の最盛期か」「どの時期に採用計画が立てられるか」を知っています。そのため「このタイミングで応募すれば、採用側の準備が整った状態で選考を進める」という最適なタイミングで応募できます。
強み③ 採用担当経験は「差別化できるスキル」
「採用担当として何百人も見てきた経験」「採用に関する実務知識」「人材採用戦略の立案経験」——これらは、採用関連部門に転職する場合、直接的で強力なスキルアピールになります。採用側にいたからこそ「どの経験をどう表現すれば、次の会社で重宝されるか」が見えやすいのです。
📝 6. 当事者になって気づいた「採用側へのアドバイス」
採用担当経験を通じて「候補者側の心理」をより深く理解できたため、採用側にいるワーママたちへのアドバイスがあります。
自己分析で困っている候補者には「最初から完璧を目指さなくていい。エージェントとの対話の中で、自分の希望は磨かれていく」というメッセージを伝えたいです。「エージェント面談で何も答えられなかった」という後ろめたさを持つ必要はありません。むしろ対話を通じて「自分が本当に求めていることは何か」を発見するプロセスが大切なのです。
また採用側として「育休中のワーママ候補者との面接」では「この人が育休中という背景で、なぜ転職を考えているのか」という背景理解をもっと丁寧に聞くべきだと気づきました。表面的な転職理由だけでなく「子育ての現実に向き合った上で、どのような働き方を望んでいるか」という深層的な動機を理解することで、より良いマッチングが可能になるはずです。
📊 当事者になって気づいた5つのギャップ早見表
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| 気づき | 採用担当のときの認識 | 当事者になって判明したこと |
|---|---|---|
| ①自己PR言語化 | 「定量+背景+強み」で書けばOK | 頭で理解と実践は別。対話を通じてしか磨かれない |
| ②転職理由ポジ変換 | 「もう少し前向きに言えば」 | 本心と建前の二重作業で心理的負荷が大きい |
| ③エージェント面談 | 「向こうが求人提案してくれる」 | 深掘り自己分析を促される。準備なしだと答えに詰まる |
| ④市場価値の確認 | 「相場はわかってる」 | 自分の評価額を聞くのは想像以上に緊張する |
| ⑤ワーママ属性 | 「そういう懸念もあるよね」 | 懸念を払拭する言葉選びが想像以上に難しい |
※ 採用担当という属性を持っていても、当事者ギャップは存在します。逆に言えば「経験ゼロのワーママでも、対話で乗り越えられる」のが転職活動の特徴です。
💡 みぃの本音メモ:副業より転職活動の方が早い
人事知識を活かして副業しようとしたこともありましたが、副業で月数万円積み上げるより、転職で年収10〜20%UPの方が圧倒的に効率いい。マイナビ「転職動向調査2025」では転職後の平均年収+19.2万円・30代+32.4万円。今は売り手市場で、ワーママ向け求人も拡大中。「転職活動 ≠ 転職」——情報を集めて辞退するのも全然アリ。動かないリスクの方が大きい時代です。
🌟 育休中の双子ママとして
2025年4月の育介法改正で、3歳以上〜小学校就学前の子を持つ労働者にも企業の柔軟措置が義務化されました(10月本格施行)。ワーママ転職市場は確実に追い風です。「転職活動は自分の市場価値を知る活動」——育休中の今こそ、エージェント面談で次の選択肢を可視化しておくのが効率的です。
