1. 採用担当として、何人のワーママに内定を出してきたか

採用担当として中途採用に関わった3年間で、書類選考を通過させたワーママ候補者は40〜50人、実際に内定を出したのは10〜15人くらいです(私が担当した分のみ・全ての採用担当に当てはまる話ではありません)。育休ブランクを理由に書類で落としたことは、少なくとも私の記憶では一度もありません。それでも「内定が出るワーママ」と「出ないワーママ」には明確な差がありました。本記事はその差を、転職活動中のワーママの皆さんが書類・面接の準備に活かせる形で正直にまとめたものです。

2. 内定が出たワーママの共通点

採用担当として内定を出してきたワーママに共通していたのは、大きく3つです。

①「制約」より「貢献」を前面に出していた

「子どもがいるので残業はできません」「時短勤務が必要です」という伝え方ではなく、「残業は月5時間以内でお願いしたい。そのなかで前職と同水準のアウトプットをコミットします」という言い方ができる人。制約を隠すのではなく、制約のなかで何ができるかを語れる人です。

❌ NG例:制約を先に話してしまう

「子どもが2人いるので、残業はできません。お迎えで18時退勤を希望します。時短勤務でも問題ないでしょうか?」

✅ OK例:貢献を先に話す【型】

STEP1 前職で○○を○年(実績の要約)

STEP2 これから○○で貢献したい(貢献意欲・継続性)

STEP3 そのうえで、退勤は18時で/時短でお願いしたい(条件は最後)

💡 職種別の言い方の例(自分の言葉に置き換えて使ってください)

💼 営業職パターン

「前職は数年、法人営業を担当してきました。育休明けも同じ熱量でお客さま提案の質に貢献したいので、商談前の準備に時間を厚く取る動き方で進めます。そのうえで、お迎えのため退勤は18時を基本にお願いできれば」

📊 事務・管理部門パターン

「前職は数年、労務や経理まわりの月次運用を回してきました。提出物の正確さとスピードで貢献したいので、優先順位の見える化を朝イチで設計します。そのうえで、お迎えのため退勤は18時を基本にお願いできれば」

💻 IT・エンジニアパターン

「前職は数年、開発チームで品質改善や運用を担当してきました。育休明けもリリース安全性に貢献したいので、自動化や検知まわりの提案を続けたいです。そのうえで、お迎えのため退勤は18時を基本にお願いできれば」

📣 企画・専門職パターン

「前職は数年、広報や企画まわりの業務を担当してきました。発信や企画運営で貢献したいので、限られた時間でも質を落とさない進行設計を意識します。そのうえで、お迎えのため退勤は18時を基本にお願いできれば」

採用担当として正直に言うと、制約の話を最初に持ってこられると「この人を採って大丈夫か」という不安が先に来てしまう。貢献の話を先に聞いて、そのうえで「だから〇〇の条件が必要です」という順番の方が、印象が全然違います。

②サポート体制が具体的だった

「家族のサポートがあります」だけだと、採用担当側で「どこまで頼れるサポートなのか」が見えません。具体性があればあるほど、選考側の安心感がぐっと増します。

❌ NG例:ふんわり「家族頼り」

「家族のサポートがあるので大丈夫です。実家も近いし、夫も協力的なので」

✅ OK例:複数手段を具体的に

「夫が週3日テレワークで、子どもの急な発熱時は半休が取れる体制です。それに加えて病児保育を2施設に登録済み、近所のファミサポも面談済み。実家は新幹線距離なので緊急時は使えませんが、平日に頼れる選択肢を3つ並べて運用しています」

💡 採用担当が「安心」と感じる、サポート手段の5パターン

面接で「具体的に語れると印象がいい」サポートの選択肢は、ざっくり5つに分けられます。書類・面接で1つだけじゃなく、複数を組み合わせて運用する計画を語れる人は強いです。

  1. 配偶者・パートナー:テレワーク日数、半休制度、急な発熱時の対応分担をセットで
  2. 実家・親族:距離(徒歩◯分/車◯分/新幹線距離)と頼れる頻度を明示
  3. 病児保育・病後児保育:登録済みの施設数、利用したことがあるかも合わせて
  4. ベビーシッター・ファミリーサポート:自治体のファミサポは事前面談必須なので「面談済み」が言えると◎
  5. 家事代行・食材宅配:「家事の時短で育児時間を確保」という運用説明として伝える

👀 サポート体制が薄い人へ:「実家が遠い・夫が激務」など今のサポート基盤が弱くても、「これから整える計画」を具体的に語れればOKです。「入社までに病児保育◯施設を登録予定」「夫の出社頻度を◯月までに調整する想定」など、計画レベルでも「採用担当はこの人なら大丈夫」と判断します。

採用担当として正直に言うと、「サポートが完璧」かどうかより「自分の働き方をシミュレーションできているか」を見ています。具体的に語れる人=入社後のトラブル時も自分で対応策を考えられる人、という印象を持つからです。

③職歴の実績が数字で語れた

「〇〇の経験があります」ではなく「〇年間の△△業務で、××という成果を数字で出してきました」という形で過去の実績を語れる人。これはワーママに限らず転職全般に言えることですが、育休ブランクがある場合は特に「直前の実績」が評価の拠り所になるので、数字を出せる人は強い。

3. 「子どもがいること」がプラスになる瞬間

採用担当をしていて「あ、この人は子どもがいることがむしろ強みになっている」と感じた瞬間がいくつかありました。

一つは、「子育て支援制度を整備したい」「育児と仕事の両立環境を作りたい」というポジションへの応募です。制度整備の担当として採用する場合、当事者として子育て経験を持つ人の方が現場の課題を肌感覚で理解している、という評価が出やすい。「あなた自身が経験しているからこそ、この制度設計ができると思う」という文脈です。

もう一つは、面接でのコミュニケーション力です。子育て経験がある人は「複数の人間の異なる要求を同時に整理する」という日常的な訓練をしている。それが「状況整理力・優先順位付け・感情のコントロール」として面接でも出てくることがある。

もちろん「子どもがいること」が直接加点されるわけではありません。でも、それを経験として活かせるような語り方ができる人は、採用担当として「この人面白いな」と感じます。

4. 書類でわかる「内定が出そうなワーママ」の特徴

書類選考の段階で「この人は次に進めよう」と判断するときの基準を、できるだけ正直に書きます。

職務経歴書の「量」ではなく「密度」

2ページに薄く書かれているより、1ページに凝縮された実績がある方が通りやすい。採用担当は書類を「読む」というより「スキャンする」に近いスピードで見ているので、すぐ目に入る部分に数字と実績があることが大事。

応募ポジションへの「繋がり」がある

職務経歴の内容が、応募先のポジションにどう繋がるかが書いてある書類は通りやすい。「なぜうちの会社に応募したのか」「なぜこのポジションなのか」が職務経歴書を読んでいるだけで伝わると、面接で確認したいことが増える(=面接に呼ばれる)。

育休期間の扱いが明確

実は、履歴書に育休期間を書く義務はありません(育休中も会社に在籍している扱いのため)。リクナビNEXT・リアルミーキャリア等の主要転職メディアでも「書かなくてOK」という案内が一般的です。

ただ採用担当の立場として正直に言うと、「○年○月〜現在 育児休業中」と職歴欄に明記してもらえると、書類選考の段階で状況が見えて安心します。書類で曖昧だと「この期間は何だろう?」という確認に時間を取られて、面接の本題に入る前のロスが出てしまう。育休ブランクは隠す必要のないことなので、最初から見える化しておくのがお互いの時短になると感じています。

※2026年5月時点、リクナビNEXT・リアルミーキャリア・キャリアロケッツマガジン・応募書類マスター・モグキャリア・JAC Recruitment 等の見解より整理。

5. 面接で「この人を採りたい」と思う瞬間

面接での「採りたい」という感覚は、正直なところロジックで言語化しづらい部分もあります。でも共通している要素として感じてきたのはこれです。

「この人はここに来たいんだな」という気持ちが伝わる瞬間。志望動機の熱量でも、会社の事業への理解度でも、「うちの会社の何に共鳴しているのか」が伝わると採用担当は嬉しい。転職活動中は複数社受けているのは当然ですが、その会社への具体的な関心が見える人は印象に残ります。

ワーママの面接でもう一つ印象に残るのは、「子どもがいることを過度に謝らない人」です。「ご迷惑をおかけするかもしれませんが」と繰り返す必要はない。当然の権利として育休を取り、当然の生活として子育てをしており、そのうえで仕事でこれだけの貢献ができる——そういうスタンスが自然に出ている人の方が、採用担当として「この人が入ってもうまくいきそう」という気持ちになります。

また、面接の「逆質問」で職場環境を具体的に確認してくる人も印象がいいです。「子育て中の社員の実際の働き方を教えてもらえますか」という逆質問は、自分の働き方を現実的にシミュレーションしているということで、入社後もギャップが出にくい人材だと判断できる。面接でワーママが使える逆質問についても別記事でまとめています。

6. 内定が出なかったワーママに正直に言うと

これは書くかどうか迷いましたが、「なぜ通らなかったのか」を知りたい人もいると思うので書きます。あくまで私が採用担当として見てきたケースで、全員に当てはまるわけではありません。

📄 書類フェーズで落ちた理由(上位3つ)

書類選考で落としたケースの上位3つは、ほぼこの3点に集約されました。育休ブランクを理由に落としたことは、少なくとも私の記憶では一度もありません。

① 実績が数字で語られていない:「○○の経験あり」だけだと、採用担当はその実績の大きさ・難易度を判断できません。「年間40件のクロージング」「3年間で売上◯◯%伸長」のように、数字で語られている経歴は、それだけで「この人にできることのスケール感」が伝わってきます。

② 応募ポジションへの繋がりが見えない:「過去にやってきたこと」と「応募ポジションでやってほしいこと」がどう繋がるのか、書類だけで読み取れないケース。職務経歴書の段階で「だからこのポジションに応募しました」が自然に伝わってくる書類は、面接で確認したいことが増えて=通過率が上がります。

③ フォーマットが読みづらい:箇条書きと長文が混在していたり、改行・余白が極端に少なかったり、職務経歴がただ時系列で羅列されている書類。採用担当は1枚を10秒くらいで「次に進めるか判断」しているので、視覚的に整っているだけで通過率は大きく変わります。

🗣 面接フェーズで落ちた理由

書類は通ったけれど面接で内定に至らなかったケースで、特に多かったのが次の2点です。

① 条件交渉が面接の最初から:給与・時短・リモートの要望が、職務内容や志望動機より先に出てくると、採用担当側に「この人は条件から入る人なんだな」という印象が先行してしまう。条件の話は1〜2次面接では最後か、最終面接で改めて確認、というのが印象を良く保ちやすいです。

② 会社への関心が薄い:転職活動中に複数社を受けているのは当然なので、全力で一社に絞れとは言いません。ただ面接の場では「この会社・このポジションへの関心」を示すことが、通過率に直結します。「御社の◯◯という取り組みに惹かれて」「先日のリリースを読んで自分にどう貢献できるか考えてきました」のような、具体的な関心の言語化があるとそれだけで印象が変わります。