1. 『嫌われる勇気』で「他者評価を手放す」

🌱 メンタル系の本命は『嫌われる勇気』。まずこの1冊から。

嫌われる勇気 書影 嫌われる勇気 著:岸見一郎・古賀史健 🔖 不安の整理(課題の分離)

🥇 いちばん効いた1冊。「課題の分離」という考え方が、人からの評価や自己否定を「自分の価値」と切り離すのに役立ちます。
→ こんな人に:人の目や評価がしんどくて動けないとき

自分の価値を疑いたくなる時、いちばんつらいのは「評価=自分の全否定」と受け取ってしまうことだと思います。育休中は特に、社会と少し距離ができるぶん、ちょっとしたことで「私って必要とされてるのかな」と沈みやすい。でも、目の前の出来事は、自分の人格そのものへのジャッジではないんですよね。採用側にいた経験から言うと、たとえば企業が人を選ぶときも、都合は山ほどあります。予算が急に下りなくなる、内部候補が現れる、採用枠が急に減る——なのに受け取った側は、それを自分の能力不足だと思い込んでしまいがちなんです。

この本で岸見一郎さんが書いてる「他者の課題を受け取らない」という考え方に、育休中に気持ちが沈んでいた私はずいぶん助けられました。アドラー心理学の考え方なんですけど、基本的には「他者の課題と自分の課題は分離されている」ってことなんです。相手がどう評価するかは、突きつめれば相手側の課題であって、こちらの価値そのものではないんですよね。採用してきた側から見ても、ある人が選ばれないのは「その場が求めるものとたまたま合わなかっただけ」で、その人がダメという話では決してないんです。

特に響いたのが「嫌われることを過度に怖がらなくていい」というメッセージ。日常でも、人の目が気になる場面はたくさんあります。「こんなこと言ったら変に思われないかな」「ちゃんとしたママに見えてるかな」と、心配で一杯になる。でも「全員に気に入られなくていい、自分に合う人・場所とだけ関係を深めればいい」と気づくだけで、心がふっと軽くなりました。

採用していた側から、ひとつだけ伝えさせてください。選考でご縁がなかったとお伝えするとき、こちらはその人の人格や努力を否定したつもりは一度もありません。予算が固まらない、社内に異動候補が現れる、求める経験年数とほんの少しズレる——本人にはどうしようもない企業側の事情が、本当に山ほどあるんです。それでも受け取った側は「自分がダメだった」と抱え込んでしまう。人が誰かを選ぶ場面は、たいていそういうもの。『嫌われる勇気』の「課題の分離」は、その思い込みを頭ではなく心からほどいてくれました。

2. 『反応しない練習』で思考をリセット

反応しない練習 書影 反応しない練習 著:草薙龍瞬 🔖 心を乱されない練習

「出来事と感情を切り分ける」仏教ベースの実践書。うまくいかない日が続いても必要以上に落ち込まないマインドセットが身につきます。
→ こんな人に:自己否定や比較で必要以上に凹んでしまう人

僧侶の草薙龍瞬さんが、古い仏教の教えをベースに「今この瞬間」を大事にする考え方を書いた本です。育休中はつい「復職したらついていけるかな」「私、社会に戻れるのかな」と、まだ来てもいない先のことばかり考えて、気持ちが沈む一方でした。

この本のポイントは「出来事自体は中立。そこに自分の感情をかぶせてるだけ」ってことなんですよね。たとえば予定どおりに物事が進まなかったという出来事があって、それ自体は悪いことでも良いことでもない。「ああ、そうなったんだ」って事実を受け止めるだけで、そこに「自分はダメな人間だ」という解釈を重ねなければいい。このマインドセット、本当に大事です。

実際この本を読んでから、育休中に浮かぶあれこれに一喜一憂しなくなりました。SNSでほかのママの投稿を見て「みんなちゃんとやってるのに私は…」と沈んでも、それは「たまたま向こうの一場面が目に入った」という事実なだけで、「自分が母親として劣っている」という確定した判断じゃない。頭に浮かぶ否定的な考えも、事実ではなく“いま重ねた解釈”だと切り分けられると、双子の寝かしつけのあとに気持ちがぐるぐるして眠れない…ということが減りました。

これは採用側にいて思うことなんですが、面接で担当者の反応が薄いと「嫌われたかな」と受け取ってしまう方はとても多いです。でも実際は、直前の会議を引きずっていたり、次の予定が気になっていたりで表情が固いだけ、ということが珍しくありません。反応は起きた事実、そこに「嫌われた」という意味を足しているのは受け取る側——『反応しない練習』のこの切り分けは、面接に限らず、人の反応にざわついたときの心の支えになってくれます。

3. 『鋼のメンタル』で「弱さを認める」

鋼のメンタル 書影 鋼のメンタル 著:百田尚樹(新潮新書) 🔖 弱さを認める強さ

作家が体験した批判・誹謗中傷との向き合い方を新書サイズで一気読み。「弱さを認める強さ」のメッセージが沁みます。
→ こんな人に:弱さを隠さなくていいと教えてくれる1冊が欲しい人

これは作家の百田尚樹さんが書いた新潮新書(新潮社/2016年)のエッセイ的人生論。鋼のメンタルというと「いつも強くいろ」と聞こえるかもしれませんが、この本が伝えるのは逆で、「打たれても折れない心は、自分の弱さを認めるところから始まる」というメッセージです。

育休や復職に向き合うって、自分の弱み・できていないこと・これから何を大事にしたいかとしっかり向き合う作業じゃないですか。それって心理的負荷が大きいんです。でもこの本を読むと、「弱さを認めるのって強い人の特徴なんだ」って気づく。育休中で時間が限られてるのも、育児で疲れるのも、思うようにいかない日があるのも、全部ありのままで。そこから何ができるかを考える。その姿勢が本当の強さなんだって。

育休に入ってしばらく経つと、「私、このまま社会から離れていっちゃうのかな」という不安がふっと押し寄せてくる時期がありました。仕事をしていた自分が遠くなって、双子の世話に追われる毎日で、自分の価値がどこにあるのか分からなくなる。その弱さを「弱いからダメ」と押し込めるんじゃなくて、「今の私はそう感じてるんだ」と一度そのまま認めてみる。この本が言うのはたぶんそういうことで、認めた瞬間にほんの少しだけ肩の力が抜けて、「じゃあ今できることから」と前を向ける感覚がありました。強がることじゃなくて、弱さを抱えたまま歩く。それが本当の強さなんだと、この本は静かに教えてくれるんですよね。

そして、弱さを認められる人ほど、面接では実は強いんです。採用担当として、つらかった時期や失敗を等身大の言葉で話せる候補者には「この人は自分を客観視できている」という確かな安心感を覚えます。メンタルがいったん整うと、復職するのか転職するのか、時短で続けるのか、次の一手を不安ではなく「自分が何を大事にしたいか」で選べるようになります。『鋼のメンタル』は、その土台を静かに作ってくれる一冊でした。