1. 2026年に動いた「税金の壁」早見表

「年収の壁」には税金の壁と社会保険の壁の2種類があります。この記事で扱う税金側は、2026年にラインがまとめて引き上げられました。

復職後の働き方を考えるとき、「年収の壁」という言葉がひとくくりで語られがちですが、実際には税金の壁(所得税・住民税・扶養)と社会保険の壁(106万・130万)はまったく別の制度です。この記事は前者、税金側だけを整理します。まず全体像から。

壁の名前 これまで 2026年 誰に関係する?
所得税の非課税ライン 160万円(2025年分) 最大178万円 働く本人
税法上の扶養 123万円 136万円 扶養に入る家族
配偶者特別控除の満額 160万円 169万円 夫婦の家計
特定親族特別控除の満額 150万円 159万円 19〜23歳未満の子がいる世帯
住民税がかかり始めるライン 100万円→110万円(2025年に引き上げ) 110万円(据え置き) 働く本人

※金額はいずれも給与収入ベース。2026年7月時点(出典:財務省・国税庁)。

ぱっと見て分かるとおり、どのラインも上方向に動いています。「昔覚えた壁の数字」のまま働く時間を決めると、実態より手前でセーブしてしまうことになる——ここが今年いちばんのポイントです。順番に見ていきます。

2. 178万円の壁:本人の所得税がかかり始めるライン

所得税の非課税ラインは2025年分で160万円になり、2026年施行の改正で最大178万円まで広がります。時短勤務の年収帯にとって身近な変化です。

まず、働く本人の所得税から。2025年分の所得税では、基礎控除95万円+給与所得控除65万円=給与収入160万円まで所得税がかからない形になりました。そして2026年施行の改正で、基礎控除が最大104万円、給与所得控除が74万円となり、非課税ラインは最大178万円まで引き上げられます(出典:財務省)。

ひとつだけ注意点があって、基礎控除104万円が満額で使えるのは給与収入665万円以下の人。それを超えると段階的に縮小します。とはいえ、時短復職やパートで「壁」を気にする年収帯なら、ほぼ満額の対象と考えて大丈夫な設計です。

復職目線で大事なのは、税金の壁は「超えたら損」の壁ではないということ。所得税は超えた分にだけかかるので、ラインを越えた途端に手取りが逆転するような崖はありません。「時短の年収がこのラインに当たるかどうか」は、働き控えの理由ではなく、手取り計算の前提として押さえておく数字です。

3. 136万円と169万円:扶養・配偶者特別控除は夫婦の家計目線で

税法上の扶養に入れるラインは123万円→136万円へ。配偶者特別控除の満額38万円が受けられるラインは160万円→169万円へ引き上げられました。

次に、夫婦の家計に関わってくる「扶養」まわり。2026年の改正で、所得税法上の扶養に入れる収入ラインが123万円から136万円に引き上げられました(出典:国税庁)。

そして共働き・扶養内パートの世帯に関係が深いのが配偶者特別控除。控除の満額38万円が受けられる配偶者の年収ラインが、160万円から169万円になりました。ここで押さえたいのは、169万円を超えても控除は段階的に減っていくだけで、いきなりゼロにはならないこと。控除がゼロになるのは、おおよそ207万円です。

配偶者特別控除で見落としやすい2点

・扶養する側の所得制限がある:控除を受ける側(たとえば夫)の年収が1,095万円以下なら満額、1,195万円を超えると対象外になります。
・「壁の手前でぴたっと止める」必要は薄い:満額ラインを越えても控除はなだらかに減るだけ。わずかな控除差のために働く時間を大きく削るのは、家計全体で見ると釣り合わないことが多いです。

「扶養内で働く」と決める前に、この136万円・169万円という新しいラインと、控除が段階的に減る仕組みをセットで知っておくと、夫婦の話し合いがしやすくなります。

4. 159万円:大学生の子がいる世帯の壁(将来知識として)

19〜23歳未満の子のアルバイト収入に関わる特定親族特別控除は、満額ラインが150万円→159万円へ。控除がゼロになるのは197万円です。

ここは軽くでいいのですが、19〜23歳未満の子——つまり大学生年代の子どもがいる世帯向けの特定親族特別控除も動きました。子のアルバイト収入が159万円までなら親が満額の控除を受けられ(従来は150万円)、197万円で控除ゼロになる段階設計です。

わが家の双子はまだ赤ちゃんなので、正直まったくの将来知識です。ただ「子どものバイト代で親の税金が変わる」という仕組みごと知っておくと、先々「聞いたことがある」状態で迎えられます。この壁も、超えたら急に大損する崖ではなく、なだらかなスロープ型に設計されている——というのが2026年の税金の壁に共通する形です。

5. 住民税は110万円から。「税金ゼロ」の境目はここ

住民税がかかり始めるラインは、2025年に100万円から110万円に引き上げられ、2026年度も110万円のままです。所得税の178万円とは別物です。

見落としやすいのが住民税です。住民税の非課税ラインは2025年に給与収入100万円から110万円へ引き上げられ、2026年度も110万円です。ここで大事なのは、所得税の178万円と住民税の110万円はラインが別だということ。「税金がまったくかからない範囲で」と考えるなら、先に来るのは住民税の110万円のほうです。

とはいえ住民税も所得税と同じく、超えた分に応じてかかる仕組み。110万円を意識して働く時間を削るより、「110万円を超えると住民税が少し発生する」と知ったうえで、トータルの手取りで判断するのが現実的です。

6. 106万・130万の「社会保険の壁」は別物

手取りへの影響が大きいのは、税金の壁よりむしろ社会保険の壁。106万円の要件撤廃予定・130万円の判定方法の変更は、別記事で詳しく整理しています。

ここまで読んで「じゃあ106万円・130万円の壁は?」と思った方へ。あれは社会保険(厚生年金・健康保険)の壁で、この記事の税金の壁とは制度がまるごと別です。しかも手取りに与えるインパクトは、超えた分に課税されるだけの税金より、保険料の負担が発生する社会保険側のほうが大きい。106万円の壁は賃金要件の撤廃が予定され、130万円の壁は労働契約ベースで判定する取扱いに変わるなど、こちらも大きく動いています。社会保険側の最新の内容は 106万・130万「年収の壁」はどう変わる?2026年の最新ルール にまとめているので、この記事とセットで読むと「年収の壁」の全体像がつながります。

7. 採用担当として:「壁で働き控える」を採用側はどう見ているか

「扶養内で」という希望自体はよくある条件のひとつ。ただ、古い壁の数字のまま時間をセーブしている人を見ると、採用側としてはもったいなく感じます。

最後に、採用する側から見た風景を少しだけ。人事として条件面の希望を聞いていると、「扶養内で働きたい」という声はごく普通の、よくある条件のひとつです。働く時間を抑えること自体をマイナスに見る採用担当は、少なくとも私のまわりにはいません。シフトが読みやすい分、ありがたいと感じる現場すらあります。

ただ、もったいないと感じるケースはあります。それは、制度が動いたことを知らずに、昔の壁の数字のまま働く時間を決めている人。話を聞いてみると、税金の壁と社会保険の壁が混ざっていて、「本当は何を避けたくてセーブしているのか」が本人の中でも曖昧なことが多いんです。壁のラインが軒並み上がった今なら、同じ「扶養内で」でも、働ける時間の上限は以前より広がっているかもしれません。

採用側から見ると、「壁を理由に一律でセーブする人」より「最新のラインを知ったうえで、自分の希望条件を言葉にできる人」のほうが、条件のすり合わせが早く、結果として希望どおりの働き方に着地しやすい。復職でも再就職でも、この記事の数字はそのまま交渉の材料になります。

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